のび太は激怒した。
それは、かの邪智暴虐の王に対してではなく
自分自身に対してだ。
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オレはいま、水タバコカフェで
甘ったるい煙を感じながら
皿屋敷のお菊がごとく
涙目でトルコリラを数えている。
何度数えても、何度数えても
お菊ちゃんのお皿が1枚足らなかったように
オレのトルコ・リラも1リラ(45円)足りない。
それなりにトルコリラは持っていたはずだ。
だが1リラ45円・・・いや4円だっけ?と
オレはこの国のレート感覚に何故か馴染むことが出来ず
ついに、ここに至りデフォルト状態に陥り
ノビタミクスの崩壊を引き起こしていたのだ。
よりよって注文後に。
むろんカード決済という手もあるが、
ここは小さな店だ。
カードが使えるとは到底思えない。
財布には円、ユーロの紙幣があるが
一万円札と100€札という大きい紙幣しかない。
この店は異国のお金に対応できるのだろうか・・・?
この展開、日本ではドルですら突破不可能であるが
ここは観光都市イスタンブールである。
もしかすると・・・
いや!もう考えるな!
こうなればただ行動あるのみよ!
意を決しオレは店員の元へと足を運んだ。
そして申し訳無さそうな顔を作るや
実は1リラ、お金が足りませぬ。
これでお釣りはありますか・・・?と
100ユーロ紙幣を差し出す。
すると、この情けない顔が功を奏したのか
店員からは「別にいいよ、1リラぐらい」
「今回は持ってるトルコリラだけでいいよ」と
慈悲にあふれた言葉が出てきたのである。
なんと!かたじけなし!
このご恩必ずお返ししますぞ!
そして、オレは通りを
野良犬のように駆けている
どこへ?決まっている。
この恩をいつ返すのか?
その双脚は何のためにあるのか?
どれも簡単な問題だ。
走れ。のび太。
それが答えだ。
両替商から戻り、カフェに利子付きで恩返しができたオレは
小さな公園で一人ボスポラス海峡を眺めていた。
蒼い炎のような海。
できれば、時を忘れて
この景色にひたっていたい。
だがフライトの時間はゆっくりと
そして確実に近づいてくる。
でも今は、あと十分だけこの海を眺めていよう。
潮の匂いのするこの場所で、
透明な炎のような陽炎にゆらめく青い海を。
オレの長い旅は終わろうとしていた。
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2015-09-19 19:03
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