夜十一時、飛行機は小さな空港へと降り立った。
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そして空港の外にはバスが一台もない。
ふざけやがって!
マルタはいっつもこうだな!
そう、オレは再びマルタの地に降り立っている。
バスの時刻表では11:15まで便があるのだが、
肝心のバスは早々に出発しており、
ピサからの観光客をパニックに陥れていた。
「どうなってるんだ!」と
バス会社のカウンターへ群がる観光客たち。
どうなってるもなにも、
早く帰りたいからバスを出したに違いない。
相手はマルタのバス会社だよ?
ここは混雑する前にタクシーに乗るのが
正しいマルタでのアクションだ。
混雑前だったからかタクシーは価格交渉に応じ
十五ユーロで目的地まで行ってくれるらしい。
かなり安いのだが、バスなら二ユーロなのに・・・
しかし色んなこと予定外である。
本来の予定では、九時頃マルタに到着し
学校でダベっている誰かを捕まえて
その流れでお家にご厄介になろうと考えていたのだが
さすがにこの時間では誰も学校にはいない。
となると、こんな真夜中に、重い荷物を背負って
寝床を探して放浪しなければならないのだ。
くっそ!今日ピサで何時間歩いたと思ってんだよ!
疲れたよーもう眠りたいよー。
各国の留学生達は国ごとに家をシェアしているのだが、
誰の家の門を叩けばよいのだろう?
繁華街近くのヨーロッパ系ハウスは入れ替わりが激しく
いざ乗り込んでみれば知り合いがいない危険性がある。
しかしブラジルハウスには確実に知り合いがいる。
だが彼らは夜の運動会に欠かさず出席する律義者たちだ。
つまり留守である可能性が非常に高い。
となると、やはりここはコリアンハウスしかないだろう。
長期滞在者も多いので知り合いはいるし
比較的マジメな人間も少なくないので
全員留守という展開はあまり考えられない。
そう結論づけたオレはタクシーから降り
コリアンハウスへと向かった。
そして始まる呼び鈴連打。
時は真夜中十二時。
完全に嫌がらせとしか思えないがこれは仕方がない。
そしてインターホンから懐かしい声が聞こえてくる。
「あれ?のび太じゃないスか!帰ってきたんスか?」
おう!ジョンイルも生きてたか!
リタやメアリー、みんなも部屋にいるのか?
「いや、それが・・・みんな夜の運動会に・・・」
・・・ジョンイル、泣くんじゃない。
そんな悲しい夜を共に過ごすためオレは帰ってきたのだ!
「の、のび太先生!」
さあ、開けたまえ。
今宵は語りつくそうぞ!
ジョンイルがリタに惚れていたことを思い出す。
アプローチ下手な彼は失敗してしまったのかもしれない。
オレには年長の男子として、
彼にこの世の摂理を説く義務がある。
男女とは一体何なのか。
失恋をどうやって昇華させるのか。
オマエは何故そんな変なメガネを愛用しているのか。
ああ、ジョンイル。
君に語らねばならんことは山のようにある。
オレが満面の笑みを浮かべたのは
寝床見つかってラッキー!などという
俗な心根からではない。
この微笑みは友の寂しさを癒やす手伝いができる喜びの証なのだ。
だから、さっさと開けたまえ。
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2015-08-28 02:34
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