霧につつまれた静かな朝だった。
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ご家族衆を起こさぬようオレ達は静かにジャンヌの家を後にした。
そしてクルマに乗り込んだ時、
ジャンヌは「どうぞ」とオレに包み紙を手渡した。
一体なんだろう?
包み紙の中にはCDが入っていた。
ジャンヌの車でよく聞いていた音楽を
まとめてくれたモノらしい。
そう、音楽とは不思議なものだ。むかし、よく聞いていた懐かしい音楽が流れだすと当時の気持ちを鮮明に思い出す。そんな経験はオレだけではないだろう。
日本ではブルターニュで聞いたフランス音楽がふと流れることはない。
だが、このCDをかければ、
楽しかったブルターニュでの日々を
鮮明に思い出すことができるだろう。
憎いプレゼントをするね、ジャンヌ。「ふふwなかなかでしょうw」
だねwいま車の中で聴いてもいいかな?「そうだね!聴こう聴こう!」
Ma directionというラップ音楽が流れる。訳すと『オレの進む道』となるだろうか。ジャンヌの話では親にはマジ迷惑かけた、
でもオレいまマジスゲーぜ的な歌詞らしい。
日本でも聞いたことのあるような内容だ。ラップでの共通の世界観なのかもしれない。
それを車の中で適当に一緒に歌う。それも毎度のことだった。「フランス語、超適当じゃんwあんたにはどう聴こえてんのよw」そうツッコまれながらも歌うことを辞めないオレは
相当に打たれ強くなったらしい。
レンヌの駅に着くとすでに列車は到着しているようだ。
駅の構内まで見送りに来てくれたジャンヌを
力強く抱擁し別れを告げる。
ブルターニュに来て本当に良かった。
車内の席に座ると少し寂しさがこみ上げてきた。だが別れは確かに寂しいが、泣く必要はない。別れが寂しいのは楽しい時が過ごせたからだ。
それにいつかまた会えるだろう。会いたいという意思を持ち、航空券さえあればいつでも会える。たぶん世界は、思ったよりも狭いのだ。
それでも寂しくなったら
ジャンヌからもらったCDを聞けばいい。そうすればあの楽しい思い出は鮮明によみがえる。
オレは本当にいいお土産をもらった。
そしてガタンゴトンと揺れる車内でオレはCDケースを開けた。・・・・・・・・・・・・・・・あれ?あっ!・・・CD、ジャンヌの車に入れっぱなし・・・だ・・・
うっぎゃああああああ!!!!!やっちまったああああああ!!!!!ジャンヌから「最後まで笑かすなw」とメッセージが入ったのは数分後のことだった。
脚注帰国後、曲目をもらい自分で作りました。そして聴くたびに楽しかった思い出より先に
電車で受けた衝撃を思い出すという悲しいCDに・・・ちくしょう、ちくしょう・・・
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